村上正邦の不惜身命その141 

 今年は新年早々、国内外は大動乱時代の到来を思わせるような事件が相次いでいます。イスラム国によるテロ事件が世界各地で頻発し、サウジとペルシャ帝国再興を目論むイランの国交断絶が中東情勢を一層不安定化させ、原油価格低迷が世界の株式市場を混乱に陥れ、世界恐慌の危機すら囁かれています。
 日本国内では安倍総理の公約である「デフレからの脱却」は一向に進まず、昨年末から株価の低迷が続き、アベノミクスの失敗が公然と語られるようになりました。


● 甘利明大臣は出処進退を誤るな!

 年初から慌ただしい動きが続く中で、先日、週刊誌が甘利明経済再生担当相の金銭授受疑惑をスクープし長期政権を視野に入れていた安倍政権に俄かに暗雲が漂い始めました。
 週刊誌の記事によれば、千葉県の建設会社と都市再生機構(UR)との間に生じた補償交渉の口利きの見返りに、建設会社側から甘利氏側に計1200万円の現金授与や飲食接待があったとされています。甘利氏本人にも大臣室で計100万円が手渡されたとのことです。事実ならあっせん利得処罰法に抵触します。

 これまでの報道や甘利氏の記者会見での発言を見る限り、この事件は何かキナ臭い感じがしてなりません。金を渡した当事者の素性や目的が明確でない点や、金銭授受を 録音などで克明に記録を残し、金銭授受のあった場所で甘利氏と写真撮影をするなど、この事件の背景には何があるのだろうかとの疑いが残ります。しかし、こうした疑惑は 時間の経過の中でいずれ明らかになってくるでしょう。

 私が問題にすべきだと考えるのは、疑惑をもたれている甘利氏自身の対応と、甘利氏を重要閣僚に任命した安倍総理の対応と責任です。
 甘利氏は十六日に金銭授受の有無などについて週刊誌の取材を受けており、この問題が週刊誌に掲載されることは分かっていた筈です。しかし、22日の記者会見では 「1週間以内には記憶を確認し、話ができると思う」と述べており、疑惑を完全に否定する材料がなく、問題を先送りしようとしていることは明らかです。

 甘利氏に残されているのは、自らの出処進退についての決断なのです。
 若い頃に読んだ『十八史略』に、出処進退の鮮やかさで中国の歴史に不滅の名を残した范蠡という人物が描かれています。
 范蠡は、戦前「児島高徳」という文部省唱歌に「天勾践を空しうする莫れ 時に范蠡無きにしも非ず」と歌われた中国・春秋時代の忠勇無比の人物です。
 この范蠡は越王勾践を助け、臥薪嘗胆の末に宿敵の呉王夫差を破り、勾践は中原に覇を唱えます。この時、范蠡はきっぱりと出処進退の決断をしたのです。勾践は猜疑心の強い性格で、苦労は共にすることは出来るが、富貴を共にする人物ではないと考えた范蠡は、勾践が中原に覇を唱え諸侯に君臨するのを見届けた後、家族を連れて越から出奔します。

 この時、盟友で自らの推挙によって勾践の側近として仕えていた文種に手紙を書きます。
「狡兎死して走狗煮らる。共に患難を与にすべきも、共に楽しみを与にすべからず。子何ぞ去らざらんや」
 文種よ!いずれ勾践は貴男を殺すことになるぞ。私と一緒に逃げよう!と手紙で伝えたのです。文種は猜疑心の強い勾践を恐れて、病気と称して謹慎しましたが、結局は勾践に忠義を疑われ、自殺に追い込まれます。
 
 政治家にとって、出処進退はいかに重要なことかを如実に示してくれる逸話です。甘利氏には、この范蠡の見事な出処進退を見習って頂きたいと思うのです。

 ● 安倍総理の任命責任を問う!

 
 甘利氏は第一次安倍政権の時から総理の側近として、要職を歴任し、第二次政権最大の懸案であるTPPを大筋合意に至るまで粘り強く交渉をリードし、タフネゴシエーターとして米国から恐れられていました。
 
 私はTPP交渉参加自体、そもそも公約違反であり、国益を損なうと考えており断固 反対の立場ですが、甘利氏のTPP担当大臣として厳しい交渉を成し遂げた能力には一定の評価はしています。

 しかし、ここで厳しく指摘しておきたいのは、TPP大筋合意に至るまでの過程で国民には交渉の経過や合意の内容が明らかにされていないことです。しかも、合意文書の正文は英語、仏語、スペイン語だけで、主要参加国である日本語の合意文書はないのです。昨年暮れに部分的に翻訳された概要が明らかにされましたが、全文の翻訳はないのです。TPP参加国の中で日本は米国と共にGDPも断トツで、主要参加国であるにも関らず、合意文書に日本語の正文がないのはどう考えてもおかしい。甘利氏にも詰めの甘いところがあったのでしょう。

 安倍総理は、こうした秘密交渉を全面的に甘利氏に託しました。安倍総理自身、甘利TPP担当大臣から適宜説明は聞いていたでしょうが、専門家でさえ十分に理解できないTPPの問題点全てを、安倍総理がしっかりと理解しているとは到底思えません。

 週刊誌に疑惑を指摘された甘利氏は、すでに安倍総理に辞表を手渡したようです。安倍総理が甘利氏に「恥を忍んで、職に留まって欲しい」と懇願しているとの報道もありますが、国会対策上、甘利氏に辞められては政権を維持できないとの危惧を持っているのでしょう。高村自民党副総裁は「録音されていたり、写真を撮られていたり、罠を仕掛けられていた感がある」と語っているそうですが、問題の本質が異なるのです。こうした発言も甘利氏の辞任を認めることが、内閣にとって致命傷になるとの懸念があるからなのでしょう。違和感があります。

 一介の大臣である甘利氏がスイスで開かれているダボス会議に出席する為、天皇陛下や総理が主として使用する政府専用機を使いましたが、異常なことです。政府関係者がこうして甘利氏に過度な配慮をしていることからも、今回の金銭授受疑惑が安倍内閣にとってメガトン級の強烈なパンチであることが観てとれます。
 
 世耕官房副長官は「甘利氏は『後ろ指をさされることはない』と言った。説明責任を 果たしてもらえると思う。安倍総理はぶれていない。『淡々と事実関係を説明した上で、仕事をやってもらう』との立場だ」と講演で語っています。安倍総理が「引き続き、仕事をやってもらう」など言っているとすれば、言語道断、長期政権が驕りを生じ、国民を舐めていると言わざるを得ません。安倍内閣そのものが、甘利氏を腫物に触るようにしている感じがします。

 世耕発言は来月4日にニュージーランドで開かれるTPP署名式に甘利氏を派遣するための布石であろうと思いますが、こうして甘利氏を庇おうとすればするほど、疑惑は深まります。また、世耕氏は首相に対しても余計なことを言ったもので、首相の最近の体調のことまで喋っている。退任は近いということを言っているようなものです。このような発言は、昔は禁句でありました。

 重要なのは、安倍総理の任命責任です。
 なるほど甘利氏はTPP担当大臣として何人にも代えがたい重要閣僚であることは認めましょう。しかし、政治家が命を懸けて仕事をするのは当然であり、金銭授受は単に甘利氏だけに突き付けられた疑惑ではないのです。

 問題はこうした人物に国家の行く末を左右するTPPという重要課題を担わせた安倍総理の任命責任です。任命責任は認めるも、その責任を取ろうとはしないのが安倍総理である。

 報道によれば、予算編成を終えた昨年末、安倍総理は菅官房長官、麻生財務相、甘利TPP担当相を招いて赤坂の中華料理店で懇談し、「アベノミクスはうまくいっている。本当によかった」と盛り上がったとのこと。ここに、安倍政権の驕りが見えます。

 3年余の安倍政権下での経済財政政策の結果、国民の貧富の格差が拡大しており、一部には「下流老人」という言葉が流行っています。生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者を指し、老人5人に1人の割合だとのことです。また、6人に1人の子供が貧困状態にあるとも聞きます。こうした中で、安倍政権は3万円給付という馬鹿なバラマキ政策を決めたのです。

 自民党の34歳の若手議員が昨年末、妻である衆院議員の出産に合わせて育児休暇を取得する意向を表明しています。これも言語道断!公人としての立場を考えるべきである。

 こうした状況下で、安倍政権の主要メンバーが「アベノミクスはうまくいっている」と言いながら、酒を酌み交わす図は見るに堪えません。
 長期政権の驕りであり、国民の将来を慮る真摯さを一切感じることは出来ません。
 
 昨年10月の内閣改造では、下着ドロ疑惑の人物が復興担当相に就任しました。この時、安倍政権は国民や野党の疑惑追及をかわすため、野党が求める臨時国会の召集を拒否しました。本来なら所謂「身体検査」をした上で閣僚人事を行うのが常識ですが、長期政権、しかも支持率が高位安定であることで、傲慢になった安倍総理には国民の疑惑に応えるという政治家として最低のモラルさえ失ったと言わざるを得ません。衆人環視の下、「下着ドロ」と思われ、毎日が針の筵の復興担当大臣に、私は同情の念を禁じ得ません。

 私は15年前、いわゆるKSD事件で逮捕されました。本ブログで何度か説明しましたが、全くの冤罪であり、今も最高裁に再審請求を行っています。
 しかし、当時私は、世間の混乱を招いたことを理由に参議院自民党議員会長を辞任しただけでなく、参院議員の職を自ら辞しました。国政や国会審議の停滞を招いては、国民に申し訳ないと考えたからです。
 出処進退は、即座に、潔くすべきだとの、私の信念で決断したのです。
 
 政治家は、自らの立場よりも、国家国民のことを最優先に判断し、進退を決めねばなりません。甘利大臣の進退に係る振る舞いが日本政治の一層の劣化を招かないことを望むものです。


● 施政方針演説に失望!

 1月4日に召集された通常国会は補正予算が成立し、22日に安倍総理が施政方針演説を行って、いよいよ本格的な論戦が行われます。
 私はこの施政方針演説を聞きましたが、残念ながら失望しました。
 
 年初に行われる施政方針演説は政府の決意と覚悟を国民に向かって示すものであって、野党を罵倒する場ではないのです。安倍総理は冒頭で野党の姿勢を厳しく批判しました。実に異例の施政方針演説です。扇動的で挑発的でありました。
 
 安倍総理曰く「批判だけに明け暮れ、対案を示さず『後はどうにかなる』そういう態度は国民に対して誠に無責任であります」
 さらに演説の最後に総理はこう言っています。「ただ反対と唱える。政策の違いを棚上げする。それでは国民への責任は果たせません」
 安倍総理のこうした演説は実に空虚に響きます。安倍総理の演説は、野党を攻撃するに熱心な余り、反論のための反論としか聞こえません。野党批判に熱中するのは、自らの弱さの表れであると思えてくるのです。
 
 私はこの施政方針演説を聞いて、慨嘆に堪えません。
 前段でも申し上げましたが、甘利大臣への金銭授受疑惑に何も答えず、疑惑解明を先送りしようとする安倍総理は、ご自分が何を言っているのか分かっておられない。自らの発言は、まさに天に唾するものです。 
 高飛車に野党を罵倒するが如き発言は厳に慎むべきだと思います。
 
 いま国民が安倍総理に聞きたい截然な懸案は、イスラムテロへの対処、中国、韓国との関係、北朝鮮の拉致、核問題など世界の中の具体的な安倍外交の方針、憲法改正はどうなるのか、国民生活は本当に大丈夫なのか、来年4月の消費増税は回避できないのか、など生活に密着した問題なのです。参院選挙での大勝を狙っての、安倍総理の演説は聞き苦しく、違和感を覚えました。
 
 今後の国会論戦を注目しています。                         
   

 感謝合掌
 
 
 来る3月11日「第五回 三月十一日東日本大震災『祈りの日』式典」を開催いたします。
 東日本大震災で被災された多くの方々に哀悼とご冥福の祈りを捧げます。
 多くの皆様のご出席を心よりお待ちしております。

第五回 三月十一日東日本大震災「祈りの日」式典

 主 催  躍進日本!春風の会
 日 時  平成二十八年三月十一日
 場 所  憲政記念館 ホール
 参加費  無料

 < 式次第 >

◆ 第一部  第五回 三月十一日東日本大震災「祈りの日」式典

午後二時〇〇分 入場開始
  二時十五分 開会
        国歌斉唱 宇野美香子(国歌奉唱歌手)
        主催者挨拶 村上正邦(躍進日本!春風の会代表・元自民党参議院議員会長)
        実行委員長挨拶 南丘喜八郎(躍進日本!春風の会幹事・「月刊日本」主幹)
        総括報告 山本峯章(大会総括・政治評論家)
  二時四五分 避難呼びかけアナウンス
    四六分 黙祷
    四七分 朗読「稲村の火」
        (読み・宇野美香子)・(馬頭琴演奏・センジャー)
        被災地代表の挨拶 井出寿一(元福島県川内村復興対策課長)
        国会議員代表挨拶 今村雅弘(衆議院東日本大震災復興特別委員長)
        来賓の紹介
  三時三〇分 閉会
 
◆ 第二部  被災地復興ドキュメンタリー映画上映 「サンマとカタール」
        ~ 女川 つながる人々 ~

午後三時三〇分 開会
        挨拶 鈴木静雄(女川町復興支援ネットワーク会長)
        カタール国王子 
        女川町代表者
        益田祐美子(総合プロデューサー)
        映画「サンマとカタール」上映会(ダイジェスト版)
午後四時三〇分 閉会

三月十一日東日本大震災『祈りの日』式典実行委員会

カテゴリー: 未分類 パーマリンク

村上正邦の不惜身命その141  への1件のフィードバック

  1. 通りがけ のコメント:

    「桜島噴火」
    >18:56に噴火、18:59に危機管理対策センターが立ち上がるって、やたら早すぎませんか?
    ・・・
    >まるで、判っていたかの様な素晴らしいアングルと見事な映像。
    >しかも、2方向から。
    >偶然にはなかなか出来ない業…。
    ・・・
    >19:00のNHKニュースが始まった瞬間にニュース速報テロップ…タイミングいいですね。
    http://richardkoshimizu.at.webry.info/201602/article_36.html#comment
    ________

    これを見てもまだユダヤキリスト教フリーメーソン政教一致カルト悪魔王イスラエルの本拠地がイスラエルじゃなくて日本のNHKであることに気づかない人がいるのだろうかね(笑)

    先祖代々親孝行で他人に親切な日本人一般庶民はもうとっくに気づいているよーん。特に若い人たちは、ね。親より進化しているから(笑)
    nueq.exblog.jp/25236098/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>