村上正邦の不惜身命その135

 ありがとうございます。

 霜月も早や半ばを過ぎ、今年も残すところ僅かになりました。時の経過の何と早いことか、と感じる今日この頃です。

 先日はパリで、「イスラム国」による同時多発テロが起き、百数十人もの犠牲者がでました。犠牲になられた方々のご冥福を心からお祈りいたします。

 中東発のテロが今、世界を大きな混乱と混迷に追い込もうとしています。まさに世紀の歴史的大転換期にある、と痛感します。犯人グループの中に、シリアなど中東各国から欧州各国に流入する十数万の難民に紛れて「イスラム国」メンバーが入国していた可能性があると外電は伝えています。

 国際情勢は実に複雑です。戦前、我が国には「欧州情勢は複雑怪奇」とコメントして、総理の座を降りた政治家がいましたが、いま我が国は当時以上に複雑怪奇な国際情勢の真っ只中にいます。欧州で頻発するテロと決して無縁ではあり得ないのです。

 政府は国際情勢を的確に把握するため、情報の収集に全力を尽し、これを的確に分析し、その上で適切な対応をしなければなりません。国家の存亡は、国際情勢を速やかに収集・分析し、如何に適切に対処するかにかっているのです。

 来年は、伊勢・志摩サミットが開かれます。このサミットもテロの対象になる可能性は十分にあります。政府は国を挙げて、テロ対策に取り組まねばなりません。へっぴり腰な対応では「恐怖すれば恐怖来たる」で、かえってテロを呼び込むことになるのではないかと心配します。
安倍総理は、国を挙げ、腹をくくって、知恵と勇気をしぼってテロ対策に取り組むべきです。
 
 テロ対策の要はインテリジェンスです。インテリジェンスとは、国家の安全保障と言う観点から、情報を収集・分析する、防諜はもちろんのこと、諜報活動も含まれます。敗戦後、我が国は米国からこうした観点からの情報活動を制限され、戦前あった組織も潰されてしまいました。現在、公安調査庁や内閣調査室などの情報機関がありますが、こられの組織は安全保障と言う観点からの活動が決定的に欠如しています。
 
 諜報活動というと、「007」を思い出す人もいるでしょうが、米国のCIAは、安倍総理はじめ閣僚、主要な議員、官僚、経済界のトップ等などの電話盗聴などの諜報活動は当然のことながら、日常活動として行っているのです。数ヶ月前、米国CIAによるメルケル首相やキャメロン首相らへの電話盗聴が暴露されましたが、欧州各国首脳が米国を厳しく批判したことは記憶に新しいことです。しかし、この時、菅官房長官は「そうした活動が行われていることは承知していません」と見当違いの記者会見をしましたが、このことは、まさに敗戦後の「平和ボケ」を象徴しています。日本が独立自尊の国家なら、毅然として米国を批判すべきでした。
 
 つまり、残念ながら、我が国はいまだ国家としての態を為していないということなのです。
 サミットへ向けてのテロ対策には、国家として情報活動にどう取り組むべきかという根本問題を含めて検討していただきたいと思います。

 ● 台・中首脳会談の評価には歴史的背景の理解が不可欠だ

 台湾の馬英九総統と中国の習近平国家主席の首脳会談が七日、シンガポールで行われました。大東亜戦争後の一九四九年、蒋介石の国民党が共産党との内戦に敗れて台湾へ逃れ、毛沢東率いる共産党が大陸に中華人民共和国を建国してから六十六年になります。

 今回の台・中首脳会談は中華人民共和国の建国以来、初めてのことです。アジアの潜在的な火薬庫と言われる台湾海峡がどうなっていくのか、日本国民は関心をもたなければなりません。日本政府も専門家、識者も会談の意味合いについて、分析を急がねばならないと思います。

 私の台湾との縁は深いものがあります。参議院議員当時から、近しい隣人である台湾の方たちとの交流に心を砕いて参りました。超党派の日華議員懇談会は、自民党の日華関係議員懇談会を発展改組して平成九年に発足し、私は副会長に就任しました。

 台湾が新幹線を導入するに当たっては、欧州連合を向こうに回して、日本の新幹線を導入させることに成功しました。私も尽力させていただき、いま台湾を南北に疾走する新幹線が安全に運行されていることに、些かの誇りを感じています。

 李登輝さんが総統退任に当たって、来日が実現するよう政府に働きかけたことも思い出されます。その後も、台湾との交流は続き、参議院議員を辞したあともしばしば訪台し、国民党、民進党双方の政治家、在野の有志の方たちと交流を深めてきました。

 来年一月に予定されている台湾総統選挙では、民進党の蔡英文主席が国民党候補を破って勝利することが確実だと伝えられています。蔡英文主席が前回二〇一二年の総統選に出馬した時には、私は台湾を訪ねました。その時、蔡英文候補の決起集会が台北で開かれており、私は彼女の決起集会に駆け付け、激励しました。彼女は総統選挙で残念ながら馬英九候補に惜敗しましたが、その時の会場の熱気に感動したことを思い出します。

 さて、台・中首脳会談が行われた翌日八日、私はこの首脳会談を取り上げたTBS番組を見ました。識者がどのような分析・批評をするのか、注目しましたが、期待は裏切られました。出演したコメンテーターの諸君は、中身のあることを何も語れないのです。さしずめ「結論は軽々には言えない」といったところでした。
 出演していたコメンテーターの諸君は「台湾は中国の一部ではない」という明々白々の歴史的事実を何も分かっていないのです。彼らは「二つの中国」と、「一つの中国、一つの台湾」という言葉の区別さえ知らないのではないか、と思いました。

「二つの中国」という場合、台湾は中国の一部という前提に立っており、「一つの中国、一つの台湾」という場合は、中国とは大陸だけであり、台湾は中国ではなく、台湾という独立国の誕生を示唆しているのです。

 台湾は蒋介石が率いた国民党のものではありません。蒋介石が共産党との内戦に敗れ、台湾に逃げ込んでくる前の台湾は、遥か以前に台湾に渡り、そこで生活していた、いわば台湾人の居住地だったのです。

 現在の台・中関係を明確に理解するには、蒋介石以来、国民党が長く支配下に置いてきた台湾は、一千万の台湾人が二百万の「中国人」という名の外国人の圧政下に置かれていたという歴史的事実をしっかりと踏まえなければならないのです。

● TBS「時事放談」のキャスター・御厨貴東大教授に苦言を呈す

 TBS番組について、もう一言申し上げたいと思います。

 十一月八日に放送された「時事放談」のキャスター、御厨貴東大教授についてです。この日は沖縄問題が主なテーマで、元財務大臣の藤井裕久さんと、元官房長官の武村正義さんがゲストでした。番組の中で、御厨さんは要旨次のように語っていました。
「かつては、自民党では山中貞則先生と野中広務さんが沖縄の問題についてモノ申していたが、今はいないではないか」

 この御厨さんの発言は聞き捨てなりません。

 沖縄問題は我が国にとって、実に重大な問題です。昭和四十七年五月、沖縄返還が実現しましたが、佐藤栄作総理は「沖縄が日本に返還されない限り、戦後は終わらない」と述べました。しかし、誠に残念なことですが、今も、沖縄は米軍による「占領」が続いている現実を、私たちは知らなければなりません。沖縄の戦後は今も終わっていないと言えるのです。

 日本の国土の僅か〇・六%を占めるに過ぎない沖縄に、面積で考えて、日本に駐留する米軍の専用基地の七五%が存在しているのです。この屈辱に沖縄県民は耐えてきたのです。

 このような現実を直視した、心ある政治家は大勢おられました。沖縄返還時の佐藤総理はもちろん、小渕恵三総理、鈴木宗男さん、そして御厨さんの挙げた野中広務さんも同様です。かく言う私も、ささやかではありますが、沖縄問題に関しては心を砕き、発言してきたつもりです。

 沖縄問題は今も解決には程遠い状況です。実に歯がゆい思いがします。しかし、「山中先生と野中さんしか声を挙げていない」という御厨さんの理解は問題です。御厨さんのような識者が、浅薄な理解では困るのです。私は、若い御厨さんを優れた政治学者であると考え、注目し、期待を寄せているからこそ、苦言を申し上げたいのです。

 私は沖縄の問題を考える時、いつも想い起すのが、大田実海軍中将の最後の電報です。大田中将は海軍の沖縄根拠地隊の司令官でした。昭和二十年六月、自決を前に大田中将は次ぎの電報を発しました。
「沖縄県民斯ク戦エリ 後世格別ノゴ高配ヲ賜ランコトヲ」
 私たちは、この大田中将の言葉を決して忘れてはならないと思います。

 安倍政権は基地負担軽減に向け、沖縄と真摯な話し合いを重ねるべきです。それを踏まえた上で米国に対する交渉を行ってほしいと思います。

 安倍政権は米国の代理人ではないはずです。「辺野古新基地建設ありき」「普天間の危険除去には辺野古移設しかない」という方針を沖縄に押し付けるのでは、県民は到底納得しないでしょう。まずは沖縄県民の声に耳を傾けることが必要だと、私は考えます。
 私の目には、米国と組んだ安倍政権が、沖縄に米軍基地を沖縄に押付けているようにしか見えません。繰り返しますが、安倍総理はまず翁長知事と真摯に、かつ徹底的に話し合い、沖縄県民の意思をしっかりと腹に据えて、米国とハード・ネゴシエーションすべきであると、私は思うのです。

● ミャンマー憲法を軽視するスーチー氏の言動に危うさを感じる

 ミャンマーで総選挙が行われ、政権交代は確実です。長くミャンマーの政治に携わってきた国軍が主導するこれまでの与党は大きく議席を後退させ、アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)が躍進し、上下両院で過半数を占める見通しです。来年一月から三月にかけて、政権交代のプロセスが進んでいきます。来年一月末には新しい議会が発足し、その議会で三月末には新大統領が選出されるのです。

 民主的な選挙によってミャンマーが民政に復帰することは、大いに言祝(ことほ)ぎたいところですが、私は一抹の不安を感じています。

 それは、憲法の規定によって大統領に就任できないスーチー氏が、憲法を踏みにじるような言動をしていることです。総選挙の勝利が確実になったことを受けて、スーチー氏は外国メディアの取材に対し、新しい大統領には何の権限もなく「新政権は私がすべてを決める」と語ったと報じられたのです。

 ミャンマー憲法は、家族に外国人がいるミャンマー国民は正副大統領に就任できないと定められています。ミャンマーはイギリスの植民地支配を受けた歴史があり、大東亜戦争によって解放されたミャンマー(当時はビルマ)は、昭和十八年(一九四三年)にいったん独立しました。しかし、日本の敗戦によってまたもやイギリスに支配されましたが、一九四八年に英連邦を離脱し、再び独立して現在にいたっています。

 スーチー氏の父アウンサン将軍は日本軍と協力したこともある独立運動家ですが、大東亜戦争後はイギリスからの独立運動を進める過程で暗殺されました。そして、スーチー氏の亡夫はイギリス人で息子も英国籍です。このため、憲法の規定によって大統領になることができないのです。この規定を設けた背景には、スーチー氏の大統領就任を妨げる軍部の狙いがありました。

 だからと言って、スーチー氏が大統領をないがしろにするような言動をすることは、自らを独裁者であると称するようなものです。NLDの党首として、国政をリードすべき立場を忘れてはなりません。あくまでも、法治を尊重すべきだと思います。憲法を無視するのではなく、手続きを経て改正する試みをとって、将来、大統領に就くこともあっていいかもしれません。今のように「民主活動家が民主主義を否定する」かのような発言をするとの批判が高まっていることは当然であり、ミャンマーの民主政治を弱めることになってしまいます。

 さらに私が指摘したいことがあります。スーチー氏は米英流の民主主義を至上のものと考えている節がありますが、それは間違いだということです。発展途上国が米英流の民主主義の導入を急ぎすぎると、国内が混乱する危険があります。

 日本は民主主義をそれなりに消化し、運用していますが、韓国やインドネシア、フィリピンなどアジアの諸国が今も政治的に安定を欠いている実態に目を向ける必要があります。彼らは米英流の民主主義を受け入れるのを急ぐ余り、国内に多くの混乱をもたらしてしまったのです。アジアにはアジア流の、発展途上国には発展途上国流の民主主義があって然るべきです。米英流の民主主義こそが至上のものだとの、米英信仰は捨て去るべきだと思うのです。
 
 我が国の識者も、民主主義神話に捉われることなく、ミャンマーの政治を温かく見守る必要があると思います。

● 国連事務総長の北朝鮮訪問について

 韓国の聯合ニュースが国連関係筋の話として、潘基文事務総長が近く、北朝鮮の首都平壌を訪問すると報じました。国連の報道官は「潘事務総長は朝鮮半島の対話と平和を後押しする役割を果たす用意があると常に述べている」との声明を出しました。

 潘事務総長が本当に訪朝するのか、現時点では判然としません。しかしながら、訪朝を模索しているのは確かで、いずれ実現する可能性があります。そこで、私は注文をしておきたいと思います。

 事務総長は、我が国と北朝鮮との最大の障壁が拉致問題であることを十分理解しておられることと思います。金正恩第一書記との会談も当然行われるでしょうが、是非とも日本の拉致問題についても議論の俎上にのせて頂きたい。横田めぐみさんをはじめとする拉致被害者について、日本国民は強い関心を寄せています。横田めぐみさんたちの消息について明確に発表するよう北朝鮮に要求していただきたいと強く願うものです。

 北東アジアの安定にとって、拉致問題の解決は避けて通れない課題です。我が国の主権、国民の人権に関する重大問題であります。潘事務総長には北東アジアの安定を期すという使命感をもって訪朝して頂きたいと思うのです。
 北朝鮮訪問前に拉致問題関係者の活を開く機会をつくっていただきたい。

合掌

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