村上正邦の不惜身命その123

● 参議院の選挙制度改革を進めよ!
 -今の国会そのものは憲法違反であるということを承知しなければならない

 ありがとうございます。
 季節は梅雨に入りました。皆さまお元気にお過しでしょうか。本格的な夏の到来をひかえ、心穏やかに過し、体調を整えておきたい時期であります。

 しかしながら、世情を見渡しますと、心を騒がせる事柄が多いのであります。まず第1に、この国会最大の課題は国家の歴史的転換ともいえる安全保障関連法案の審議であります。先日の衆院憲法審査会に出席した憲法を専攻する学者3人が全員、安倍政権が国会に提案している安全保障関連法案を憲法違反だと明確に述べました。驚いたことに、与党である自民党が推薦する学者までも、「違憲」と断じたのです。

 私はこの憲法問題に関して、従来から一貫して「現憲法無効論」を主張してまいりました。現憲法は、占領中にGHQが改正原案を僅か一週間でデッチあげた占領基本法であります。帝国議会で一部を修正する形式をとったとはいえ、明治憲法の改正限界を超えているだけではなく、ハーグ陸戦法規にも明確に違反しています。本来であれば、占領が終わった時点で、現憲法は失効すべきものだったのです。しかし、残念ながら、大半の国民は慣れきってしまい、独立回復後もこの憲法を墨守している始末です。

 では今、私たちはこの安全保障関連法案をどう考えればいいのでしょうか。
 私は憲法解釈を無限に拡大することには断固反対です。
 先日の憲法審査会で三人の学者がこぞって憲法違反だと断じましたが、憲法を改正することなく、解釈改憲を拡大することによって、自衛隊の海外派兵や一部武力行使を容認するという小手先の手法はもう通用しないことを明らかにしたのです。

 祖国を守り、国民の幸福、安寧を断固守るというなら、堂々と憲法改正を国民に訴えるべきです。かつて、安倍総理は憲法九十六条改正を提起したことがありました。憲法改正の国会発議を三分の二から過半数へ、ハードルを下げる意図からでありました。

 しかし、国民はこれを評価せず、世論調査の支持が下がった結果、安倍総理はいともあっさりと九十六条改正案を引っ込めました。国家にとって最も大切な柱である憲法をそう粗末に扱うべきではありません。

 安倍総理に申し上げたい。
 祖国防衛に日本の青年の血を流させようとするなら、その決意と覚悟を国民の前に披瀝し、堂々と憲法の改正を訴えるべきです。それが一国の宰相ではないでしょうか。全身全霊を込め、国民に誠心で訴えれば、国民は必ず理解を示してくれる筈です。

 安倍総理! 
 姑息な手法を捨て去って、国民に対して声涙ともに下るような真剣な訴えをしていただきたいのです。

 さらに、憲法改正問題について申し述べます。私が在籍した古巣の参議院の問題があります。参議院の先生方はいったい何をしているのか。参議院の選挙制度の改革が一向に進んでいないのは、大きな問題であります。
 明治以来の議会政治の伝統を踏まえ、我が国は二院制を維持していくことが望ましいと思います。長い議会政治の歴史をもつ世界の主要国は、いずれも二院制を採っております。一院制は、どちらかというと新興国に多いのです。

 二院制は、時間の無駄と唱える向きもありますが、それはいささか短慮というものではないでしょうか。参議院は与党であっても、四分六のかまえで野党となってもよいのではないか。民主党政権当時、野党だった自民党や公明党は参議院で多数を持ち、民主党政権が迷走することを押しとどめる役割を果たしました。たとえば、外国人参政権問題がそうであります。野党だった参議院自民党の存在が国家の土台である参政権をめぐって、日本国民の権利を損なうような失政をとらせない役割を果たしたのであります。

 今、中国や韓国のふるまいをみて、日本国民が外国人参政権の付与を支持しないことは明らかです。外国人参政権を推進しようという人々は息を潜めております。あのとき、参政権を付与しておれば、千載の悔いを残したに違いありません。

 さりとて、今の参議院は、衆議院のカーボンコピーと言われて久しいのも事実であります。これでは国民の十分な支持は得られません。大改革をしなければならないのであります。参議院改革のメニューはすでに出尽くしていると思います。

 昨年四月、第九十七回の「不惜身命」において、私は参議院の選挙制度に関する所見をお示ししました。これに基づき、改めて考えを簡単に述べておきたいと思います。
 参議院の改革は、二段構えで行う必要があります。本当の大改革は憲法改正が必要であります。しかし、それ以前の段階においても、現憲法下の改革も欠かすことができません。

 憲法改正を伴う大改革とは、参議院と衆議院の役割、権能の分担を見直し、それに伴って選挙制度も相当異なるものにすべきです。現憲法が第四十六条で定める「任期六年で三年ごとの半数改選」の制度を廃止し、任期は五年、全議員の一括改選をはかったらどうでしょうか。

 現憲法下の選挙制度改革は、全国区(全国比例区)を廃止すべきでありましょう。候補者の資質を見極めにくく、望ましくない「人気投票」になりがちだからであります。一方で、選挙区については、合区案ですら、これからの人口動態、すなわち地方における大幅な人口減少に追いつけず、泥縄式の制度になると考えます。

 最高裁の判断が気になりますが、私としては、参議院議員は都道府県代表の性格を帯びさせたらどうかと考えます。いっそのこと、一票の格差にこだわることなく、各都道府県を選挙区とし、改選ごとに定数一を割り振ったらどうでしょうか。もし、憲法に触れるというなら、憲法を改正すればよいのであります。

 今、参議院の与野党は、選挙制度改革案をまとめられないでおります。第一党たる参議院自民党の責任は大きいと言わざるを得ません。

 先日、参議院議長の山崎正昭さんとお会いしました。私は、議長の責任でもって、賢人会議のような第三者機関を設け、改革案を作ったらどうかと提案しました。参議院改革に熱心に取り組んできた、見識ある議長経験者等で構成するのです。たとえば、斎藤十朗さんや江田五月さんは適任でありましょう。その場において、現下の選挙制度改革とともに、憲法改正を伴う国会改革、参議院改革についても意見を戦わせ、提言を得るとよいのではないでしょうか。現役の諸君だけ解決策を得られないのであれば、こうした先輩の知恵を借りるのも一策であります。参議院側から思い切った大改革案を提出することが必須であります。

● 参議院こそ、憲法改正の先頭に立て

 今の参議院の諸君に対して、私がいささか不満に思っているもう一つの点は、憲法改正と参議院の問題についてであります。

 なぜ、参議院から、熱を帯びた憲法改正論議が発信されないのでしょうか。私は、平成十二年一月に初代の参議院憲法調査会長に就任したとき、固く決意したことがありました。憲法改正へ我が国を引っ張っていくために、参議院が牽引車となろう、というものであります。それこそが、任期六年を与えられ、良識の府を理想像とする参議院の役割だと思ったからであります。

 参議院と衆議院は同時に憲法調査会をスタートさせましたが、私が調査会長を務めていた間は、熱心に取り組み、参議院が議論をリードしていたと自負しています。衆議院の調査会長を務め、功績を残された中山太郎さんも、私をお訪ねになり、「参議院はどう進めているのですか」、「どのような問題提起をしますか」などとお聞きになることがしばしばでした。

 ところがその後、憲法改正論議は衆議院が先行し、参議院は後塵を拝する形になっています。残念でなりません。

 今、国の統治機構のあり方に対する関心が高まっています。これは、道州制など国と地方の関係についてはもちろんのこと、国権の最高機関である参議院や衆議院のあり方も、重大テーマなのであります。
 私見でありますが、たとえば参議院はいっそ定数を今の半分にして、政府の省庁ごとに設けた委員会をやめたらいい。予算案の審議もやめ、決算の審議に特化してもよいくらいであります。会計監査院を傘下に治め、決算を先に審議してから予算を立て、国防や外交、教育、科学技術といった国家百年の計について論ずる院として生まれ変わったらいいのであります。

 ですから、参議院の憲法審査会は、具体的な憲法改正案を、衆議院に先駆けて作るくらいの気概が必要であります。現役諸君の奮起を促したい。

 参議院自民党執行部の要請で、自民党の憲法改正推進本部が、党の憲法改正案に、参院選挙区は都道府県単位とする案を加えることになったと報じられています。
 その結論には反対しませんが、唐突感があることは否めません。短期間であったとしても、参議院議員をはじめ自民党所属議員が、毎日何時間も議論を戦わせ、そのうえで憲法改正草案に盛り込むべきではないでしょうか。そのような姿を国民に見せることなしに事を進めるのは、いささか疑問であります。
 自民党内だけでなく、参議院の憲法審査会においても、たとえば年内に憲法改正案をつくるぐらいの勢いで、話し合いを進めるべきでありましょう。

 憲法改正原案をつくり、議決することができるのは、一億二千万人の国民のうち、参議院議員と衆議院議員だけに与えられた重任なのです。参議院の現役の諸君は、衆議院議員諸公に劣らぬ働きを、国民の前に見せるべきでありましょう。

 切に期待しています。

 ● 埼玉県知事選に思う―許されない「陛下の政治利用」

 選挙に関連して気にかかる事柄はもう一つあります。今国会で選挙権を18歳以上に引き下げることが決まる見通しです。十八歳と十九歳の若者が投票所へ足を運ぶことになりますが、それによって選挙結果が変わるのではないかと他人任せのような事を言う人がいるのです。そのような計算をするよりも、政に携わる人の意識が変わるという事の方が、よほどの大事であります。「立候補者の質」の問題の方が重いと心するべきであります。

 私が在住する埼玉県の知事選が来る八月九日に実施されます。自民党埼玉県連が知事選の候補者として、天皇陛下の心臓手術を執刀した順天堂大学医学部の天野篤教授に出馬を依頼したとの報道があり、私は驚愕しました。新聞によれば、自民党県連の新藤義孝会長は「埼玉県政最大の課題は医療・福祉の充実で、専門家として最適な資質を備えている」と説明しているようです。

 いま地方に最も強く求められているのは、日本国再生のための「地方創生」であります。もちろん「医療・福祉の充実」は大切ですが、自民党県連が天野教授を候補者として擁立しようという背景は、天皇陛下の心臓手術の執刀医という高い知名度で選挙に勝とうという思惑が見え見えです。

 敢えて申し上げれば、これは「陛下の政治利用」そのものではありませんか。選挙で、天皇陛下を利用するなどもってのほかであります。そもそも、このような発想を持つこと自体が、残念の極みとしか言いようがありません。保守政党を名乗る自民党が、このようなことを発想することが、私には信じがたいのです!

 天皇陛下は、国家と国民統合の象徴でおられます。政争の世界よりも、はるかに高いお立場で、日本をお治めになるのが日本の国柄であって、政党による政治利用など許されるものではありません。保守政党を自認しているはずの自民党県連の諸君に、猛省を促したいのであります。

 一方、現職の上田清司知事も、知事選出馬の際「知事任期は三期まで」と述べ、翌平成十六年には自ら、知事の四選自粛を努力義務とする「多選自粛条例」を制定しております。いやしくも埼玉県政のトップにある知事自身が自ら定めた条例に違反するとは、開いた口が塞がりません。
 「綸言汗の如し」という言葉がありますが、君主はもとより政治家も服膺するよう薦めます。

 埼玉県政に関わる皆さんは、日本の国柄と県民のためを思い、最善を尽してほしいと思います。
 
 合掌

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村上正邦の不惜身命その123 への1件のフィードバック

  1. 江田五月 のコメント:

    ご健勝に敬意を表します。
    今回は、私の名前を山崎議長にご推薦下さったとのこと、大変光栄に存じます。
    また、天下に轟き渡るご叱責、私も思いを共にするところが多く、エールを送ります。
    勿論、いくつかの重要な点で、考え方を異にします。
    いずれにせよ、小手先政治は終わりにさせたいものです。
    私はまだ現役なので、自分の責任も重大です。

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