村上正邦の不惜身命その160


● 急速に進む高齢化に相応しい「自動車社会」を作ることが急務だ

 
 ありがとうございます。

 高齢者ドライバーによる悲惨な交通事故が後を絶ちません。
 連日の様に新聞やTVで報じられています。

 10月に、横浜で87歳の男性が運転する軽トラックが小学生の列に突っ込んで、7人が死傷しました。11月には、東京・立川の病院の敷地内で、83歳の女性が運転する乗用車が、男女2人をはねて死亡させるなど、高齢者ドライバーによる悲惨な交通事故が連日のように、新聞・TVで報じられています。
 
 また、高速道路を逆走する高齢者ドライバーも後を絶たず、逆走による事故の報道も最近は目立っています。

 私は昭和7年生まれで84歳になりますが、高齢者ドライバーの事故が新聞・TVで報じられるたびに暗然たる思いになります。
 
 社会から労わられる年齢になった筈の高齢者が、ハンドルを握って、人をはね、死傷事故を起してしまう。被害者はかけがえのない命を奪われるか、大怪我を負い、その家族は不幸のどん底に落とされてしまいます。
 一方、事故を起こした高齢者はもちろん、その家族も大変厳しい立場に置かれます。

 報道によれば、高齢者ドライバーの起こす重大事故は、ブレーキとアクセルを踏み間違えて、商店に突っ込んだり、高速道路を逆走して対向車線の車と正面衝突する、或いは急発進して歩行者をはねるなど、予測不能の場合が多いようです。こうして、高齢者が小学生や前途ある若者を死傷させることが、事故の悲劇性を増しています。

 このように、高齢者ドライバーによる交通死亡事故が最近目立つようになりました。しかし、決して高齢者の事故率が高まっているわけではありません。

 専門家によれば、事故を引き起こす割合は、高齢者より20歳台の若者の方が高いのです。長寿社会になって、高齢者が急増しているために、高齢者ドライバーによる事故件数が増え、社会問題になっているのです。
 つまり、日本社会が驚くべきスピードで高齢化しているために、こうした高齢者による交通事故件数が急増しているというわけです。
 それは人口構成をみると一目瞭然です。総人口に占める65歳以上の高齢者は、敗戦直後の昭和21年に5.6%だったのが、昭和48年には7.5%、昨年はなんと27.3%と、近年になって高齢化が驚くべきスピードで進行しています。

 敗戦直後には65歳以上の高齢者は総人口の20分の1に過ぎなかったのが、今日では総人口の4分の1以上を占めているのです。
 
 高齢者による交通事故の急激な増加は、この急速に進む高齢化がもたらす当然の結果だと考えるべきではないでしょうか。

 問題は、こうした急速に進む高齢化に見合った政策がとられてこなかったことが、高齢ドライバーによる交通事故の多発の原因なのです。
 つまり政治が高齢化社会に十分な対応を怠っていたことが最大の問題なのだと、私は考えます。

 対処療法として、自治体や警察では、高齢者の運転免許証の自主的返納を促す運動をしているところもあります。しかし、当然ながら大きな成果はあがっていません。

 足腰が弱くなり、近所への買い物が困難になった単身の高齢者、しかも公共交通機関がほとんどない過疎地域では、自動車は高齢者の生活には必要不可欠です。身寄りがなくなり、単身で生活せざるを得ない高齢者が増加しているという実態が為政者の眼に見えていない。高齢者への暖かい眼差しが欠如していると、私は思います。
 
 ただし、本来、運転免許を与えられない水準にまで身体、認知能力が落ちてしまった人は、運転する資格がないことはもちろんです。高齢者だからといって例外は許されません。最近相次いでいる悲惨な事故を見ればわかることです。高齢者は、本来、若い人々の手本になるべき存在なのです。

 現在、70歳以上のドライバーは、免許の更新の際に記憶力や判断力を調べる高齢者講習がありますが、十分とはいえません。私は、講習費用は無料にして、毎年受講してもらうという対応が必要ではないかと思います。

 その結果、高齢者が免許を失うのは、悲惨な事故を防ぐ上でやむを得ません。その代わりに、家族は高齢者の外出を手助けをし、自治体は小型バスの運行など高齢者の生活実態に合わせた施策を講じる必要があります。
 交通の便の悪い地域には、自治体が補助金を出して、生鮮食品など生活必需品を満載した車での移動販売を、積極的に行うべきだと思うのです。


● 上杉鷹山の高齢者政策に学べ!

 
 そこで私が思い出すのは、江戸時代屈指の名君と呼ばれた、米沢藩の上杉鷹山です。
 半世紀ほど前に米国大統領に就任したジョン・F・ケネディが最も尊敬する人物の一人として挙げたのが、この上杉鷹山でした。

 上杉鷹山は江戸中期の米沢藩主で、若くして藩主になった時、米沢藩には毎年、年2万8千両の財政赤字がありました。彼は独自の経営学で見事な財政改革を成功させ、天明・天保の大飢饉の際にも一人の餓死者すら出さない見事な政治を実現しました。米沢を訪ねると、鷹山が再興した藩校・興譲館が県立米沢興譲館高校として現在も前途有望な学生を世に送り出しています。
 
 それだけではありません。
 鷹山は実に見事な高齢者に対する政治を実践したのです。
 鷹山は、「70歳以上の者には、村人が皆で協力して、労るようにせよ。90歳以上の者には格別の心遣いをせよ」との通達を出しました。
 加えて、毎年90歳以上の高齢者を代官所へ招き、「養老米」を贈って、藩主と会食を共にする場すら作ったのです。

 米沢藩の農民はこぞって鷹山の施策に応え、農業生産高は飛躍的に伸び、上記の通り、天明・天保の大飢饉を乗り越えたのです。

 私が好きな鷹山の言葉があります。

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も
  成らぬは、人の為さぬなりけり」

 高齢者ドライバーによる交通事故の多発が報じられる度に、私は上杉鷹山の故事を想い起すのです。
 戦後の人口構成の急激な変化と、それに伴う高齢化社会の到来を真正面から受け止め、暖かい心を持って、対策に乗り出すべき時期がきていると痛感します。

 私は昭和七年生れの八十四歳です。家族や秘書の諸君が車を運転してくれる恵まれた立場にあります。それだけに、高齢者の皆さんを守るために、あらゆる手立てを講じてほしいと、焦慮にも似た思いにかられるのです。

 国会議員の皆さん、役所の皆さんにも申し上げたい。

 高齢化社会に突入した我が国は、率先して高齢者政策を打ち出すべきだと思うのです。
 それこそが、公務に就いた貴方がたに課せられた責務なのです。

 合掌

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