村上正邦の不惜身命その159

 ● トランプ氏に逆転勝利をもたらしたのは「大衆の叛乱」だ!

 ありがとうございます。

 11月8日に行われた米大統領選で、ドナルド・トランプ氏が奇跡の逆転勝利で、次期大統領の座を獲得しました。来年1月20日には、第45代大統領に就任することになります。

 当選したトランプ氏は選挙中、「メキシコとの国境に壁を作る」「不法移民は強制的に送り返せ」と差別的発言を繰り返し、アメリカファーストを前面に打ち出しました。

 また、日本に関しても「日米安保条約は不公平だ。米国が攻撃を受けても、日本は何もしない」「米軍受け入れ国は駐留費用は残額払うべきだ」など、現在の日米関係を充分に理解していない乱暴な発言が目立ちました。

 今回の大統領選は、共和党のトランプ氏も民主党のヒラリー氏も、共に米国民からは「嫌われ者」で、好感度が2人とも史上最低でした。加えて、大手マスコミの世論調査による選挙予測が全部外れ、トランプ氏の当選を予測したマスコミは殆どありませんでした。
「アメリカを再び偉大にする」というスローガンで支持者を熱狂させると同時に、数々の暴言を吐き続けた人物が、史上最も醜かったと言われた大統領選を制したのですから、今回の大統領選挙は何とも異例ずくめの選挙でした。
 
 何故、米国の大統領選で、こうした下劣な非難合戦がまかり通り、乱暴な差別発言を繰り返したトランプ氏が当選するという結果になったのか。
 この問題は充分に検証する必要があります。
 私は早晩、同じような「トランプ現象」が、この日本でも起きると確信しているからです。

 今回の大統領選でトランプ氏に勝利の栄冠をもたらしたのは、「大衆の叛乱」だったと私は考えます。
 この「大衆の叛乱」の原因はズバリ、「貧困と格差」です。

 30年余り前のレーガン政権から始まった、「新自由主義」政策が行き過ぎた結果、米国民の間の所得格差が極端に大きくなりました。しかも、その格差が固定化し、かつて米国民の誰もが憧れた「アメリカン・ドリーム」は消滅してしまいました。アメリカ国民の誰もが持っていた「いずれはビリオネアになるぞ!」という夢が消えてしまったのです。

 米国経済は成長を続けているとはいえ、国民生活は決して楽にはなっていません。米国の富の99%を、僅か1%に過ぎない少数の富裕層が独り占めしているのが現状です。数年前に「ウォール街を占拠せよ!」というデモが起きたことを想い出せば、この傾向ははっきりとしています。
 米国の桁外れのビリオネアと呼ばれる富裕層に巨大な富が集中し、一方で、大多数の白人労働者の職は奪われている、これが米国の実態なのです。

 これに加え、トランプ氏が奇跡的な勝利を掴んだ背景には、職を奪われた白人労働者が不法移民に抱く危機意識がありました。
 メキシコなど中南米からのヒスパニックや、中東などから大勢の不法移民が流入しており、その数は1千万人を上っていると言われています。
 
 近年、急速に数を増やしている不法移民は、正規の労働には就けず、安い労働力として使われているのです。その結果、低所得層の白人が職を奪われるという事態が生まれ、強い危機感を募らせています。
 トランプ氏の「メキシコとの国境に壁を作る」、「費用はメキシコに支払わせる」という乱暴な発言を、熱狂的に受け入れる素地が、ここ数年の間に米国民の中に芽生えていたのです。

 トランプ陣営は、人種や所得階層間の対立を煽り、人々の「怒り」を支持につなげました。中でも白人の低所得層に的を絞った戦略が功を奏したのです。これが、トランプ氏の逆転大勝利につながったと見ていいでしょう。
 高卒以下の白人は、選挙における出口調査34%を占め、このうちトランプ氏に投票したのは67%と、クリントン氏を圧倒していました。
 
 最近の米国統計局の調査では、2015年の推計によれば、白人の比率は61.6%で、5年前から2.1ポイント減少し、今世紀末には白人は半数を切る見通しです。
 こうした人種間の差別や格差は、日本では見られませんが、所得格差の問題はこれから我が国の政治・社会の動向を占う大きなポイントだと思います。

 さて、トランプ次期大統領は先週末から、1月からスタートする新政権に起用する閣僚の人選を本格化させています。
 新政権で省庁幹部を占める政治任用のポストは4000人にも上りますが、すでにテロ対策や安全保障の分野で人種差別発言など強硬な発言をする人物を登用しています。

 こうした中で、安倍総理は各国首脳に先立って、トランプ次期大統領と会談しました。非公式な会談とのことで、会談内容は明らかにされていませんが、概ね友好的な雰囲気の中で行われたとマスコミは伝えています。
 新聞各紙は、にこやかに会談する二人の写真を一面で報じていましたが、トランプ次期大統領はしたたかな人物であることを忘れてはなりません。
 
 トランプ氏は30年前に次のような意見広告をニューヨーク・タイムスなど有力紙に出しています。
 「何十年にもわたって日本や他の国々は、米国を利用してきた。日本は巨額の防衛費支出という障害を負うことなく、活気ある経済をつくった」

 つまり、トランプ氏の選挙中の発言は決して気まぐれではなく、長い間の持論なのです。しかも、彼は自分のオフィスに反日のポスターを貼っていたというのですから、筋金入りの「反日」だと考えてもいいのではないでしょうか。

 安倍総理! にこやかな会談だったといって、努々(ゆめゆめ)御油断めさるな!と申し上げておきたい。

 この、安倍総理とトランプ次期大統領の非公式会談について、もう一言申し上げたい。

 現職のオバマ大統領を差し置いて、次期大統領にそそくさと会いに行くのは、オバマ大統領への礼を失していると言わざるを得ません。本来であれば、ペルーで開催されるAPEC首脳会議で、オバマ大統領との首脳会談を終えた後に、ニューヨークに立ち寄って、トランプ次期大統領に会うべきだったのです。

 安倍総理は米大統領選の行われていた去る9月、ニューヨークで、民主党のクリントン候補に会い、「私の政権が進めている『女性が輝く社会』にいち早く賛同の意を表明していただいたことにお礼を申し上げたい」と述べ、暗にトランプ氏への不信感を表明したことがありました。
 大統領選の最中に片方の候補者だけに会うことなど、外交上の重大な失策です。大統領選の開票が進む中、トランプ氏が票を伸ばしている状況に驚いた安倍総理は、外務省担当者に当り散らしたと伝えられています。

 トランプ氏逆転勝利の報を聞いて驚愕した安倍総理は急遽、トランプ氏との会談を申し入れたそうですが、官邸と外務省の情報収集能力の無さには驚くばかりです。
 
 トランプ氏は自著『トランプ自伝――不動産王にビジネスを学ぶ』で、「人をだまし通すことはできない。熱狂的な空気をつくり、素晴らしいプロモーションを展開し、メディアの反響を受け、少しばかりの誇張はしてもいいだろう。しかし結果を出さなければ、いずれは見透かされる」と書いています。

 トランプ次期大統領は政治家の経験はないとはいえ、したたかなビジネスマンであることは間違いありません。
 
 安倍総理はトランプ氏に「結果を出さなければ、いずれは見透かされる」と思わせるタフな対米交渉を望みたいものです。

  
● 安倍一強支配体制の下では、早晩「トランプ現象」が必ず起きる!


 私はトランプ氏の勝利の原因は「貧困と格差」に起因する「大衆の叛乱」にあると申し上げましたが、この問題は決して米国だけではありません。

 英国で行われたEU残留か、離脱かの国民投票で、EU離脱派が過半数を上回りました。この時も、マスコミの予測は完全に外れましたが、これも既得権益を墨守する既成政治家への「大衆の叛乱」だったと思います。
 
 韓国で起きている朴槿恵政権への厳しい批判も、富を独占する財閥を擁護し、一方で「貧困と格差」を放置してきた既成政治家に対する「大衆の叛乱」だと言っていいでしょう。

 我が国でも、小泉政権以降、新自由主義が野放図に進められ、その結果、「貧困と格差」が拡大し、かつ固定化しつつあります。しかし、日本人は我慢強いのか、決して権力に対して叛乱など考えもしませんでした。

 自民党は直近の国政選挙で4連勝しており、マスコミでは「自民党一強」「安倍一強」と安倍政権を持ち上げているように思います。それかあらぬか、安倍総理は最近、野党や国民の声に謙虚に耳を傾ける姿勢が欠如していると思わざるをえません。

 しかし、選挙結果を冷静に分析すれば、自民党が勝利を重ねているのは、野党第一党たる民進党が、失政続きだった旧民主党から生まれ変わっていないからに過ぎないことは一目瞭然です。

 アベノミクスも完全に失速し、専門家の間では、失敗だとの評価が定着しつつあります。労働者の実質賃金は低下し、不正規雇用が常態化しています。国民の生活は楽ではないのです。未来に明るい展望を持てないとき、国民の怒りは政府与党に向かうものです。 さらには、米国や欧州で最大の問題である外国人労働者の無原則な受け入れに、安倍政権は舵を切ろうとしています。

 安倍政権がこのままの政策を推し進めるならば、国民の怒りは早晩、既成政治家、既成政党に向かうでしょう。
 トランプ現象は決して米国だけの特産物ではないのです。
 
 改めて申し上げたい。

 安倍総理は勝って兜の緒を締め、厳しい生活の中で必死に生きている国民に眼を向け、民の声に謙虚に耳を傾けるべきです。
 厳しい物言いになりましたが、これは私の心からの叫びなのです。

合掌

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