村上正邦の不惜身命その152

天皇陛下のお言葉をお聞きして 

 天皇陛下のお気持ちをお聞きしたとき、これは「陛下の心と魂の叫びだ」と、胸の張り裂けるような思いを禁じ得ませんでした。
 お言葉の中で、陛下は「80歳を超え…」という言葉を2回も繰り返されました。迫りくる老いに真正面に向いながら、天皇として「今生で果たすべきことは何か」と、日々心を砕いてこられた陛下の思いが、今年84歳を迎える私の胸に突き刺さりました。

 実は、先月13日、NHKが「陛下が生前退位の意向を示されている」と伝えた時、私は次のように受け止めました。
「天皇陛下が生前譲位のご意向をお持ちであることが明確に示されるのであれば、安倍総理はじめ内閣、国会は真摯にこれを受け止め、憲法改正は勿論、皇室典範改正を俎上に載せて検討を始める他ないと思います。決して拙速であってはならないが、現行規定16条の摂政が大いに参考になろうと考えます。古代、推古天皇の御世に聖徳太子を摂政として冊立した智慧に学ぶことではないでしょうか」(『不惜身命』7月19日/150号)

 しかし、8月8日に陛下が次のように述べられたことに、頭蓋骨を殴打されたような衝撃を受けると同時に、陛下の深い御心に打たれました。
「天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」

 陛下は、天皇の最も大切な役割は、「国民のために祈るということなのだ」と仰ったのです。しかし、現行憲法や皇室典範は天皇の存在を法律で縛り、天皇を一機関として、国事行為のなかに閉じ込めてしまいました。憲法や典範は、天皇の最大のお務めである「祈り」には一切言及していません。

 陛下は日本国憲法下で即位した直後の朝見の儀で「日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と述べられました。だからこそ、憲法に規定された国事行為や公務を全身全霊でお務めになってこられたのです。しかし、先のお言葉で、こうした国事行為や公務よりも、「祈り」こそが、天皇としての最も大切なお務めだと、私たち国民に明らかにされたのだと、私は考えました。だとするなら、摂政を置くことなどは考えるべきではない、私の考えは間違いだったとはっきりと覚りました。

 こうした陛下のご真情を理解することもできぬまま、陛下にお尽くしすることが自らの最高の喜びと心得ていたことが、何と浅はかで厚顔であったかを知らされ、恥ずかしくもあり、身の置きどころがない思いです。

 歴史を振り返れば、天皇は時には塀が壊れ、朽ちた京都の御所に在って、五穀豊穣と国家国民の安寧と繁栄を祈るための祭祀に尽瘁しておられました。明治維新まで、天皇は「祭祀王」、つまりプリースト・キングとしてのご存在だったのです。

 維新で徳川幕府を打ち破った薩長藩閥政権は、天皇を京都御所から連れ出し、賊軍であった徳川の居城である江戸城に移し、権力の象徴としました。加えて、薩長藩閥政府は、祭祀王であり、日本文化の淵源である天皇に陸軍の軍服を着せ、「大元帥」に仕立て上げたのです。率直に言うならば、薩長藩閥政府は自らの統治に資するため、天皇を利用したのです。それは日本が近代国家としてスタートを切るため、已むを得ざる状況にあったと考えることも出来ましょう。

 そして71年前、大東亜戦争に敗れた我が国に対し、米国は占領基本法たる憲法を押しつけ、今度は米国の支配に資するシンボル・象徴に仕立て上げたのです。つまり、天皇は明治維新期には薩長藩閥政府に、敗戦後は米国にそれぞれ利用されたといって過言ではないと思います。

 私は陛下の「心と魂の叫び」をお聞きし、天皇は権力の僕ではなく、五穀豊穣と国家国民の安寧と繫栄のために祈る、祭祀王としての本来のお務めに戻っていただくことこそが、大切なのではなかろうかと考えました。

 世界史的な大転換期にあって、天皇の在り方を根本的に考えるべき時に至ったのです。多くの国民は驚くかもしれませんが、天皇は現世の権力を象徴する今の皇居である江戸城から、京都、あるいは大和の地へお移りになり、祭祀にご専念されることが必要なのではないかと考えるのです。

 現憲法は、天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるとしていますが、天皇はこうした憲法や法律に規定される存在ではない、時間と空間を超越したご存在です。そうした永遠なるご存在に戻られることこそが、私が尊敬する谷口雅春師の言う「天皇国日本」を実現する道であり、皇室が無窮に続くことになると考えるのです。
                  
 感謝合掌

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