村上正邦の不惜身命その150

● 天皇陛下ありがとうございます

● 安倍総理はじめ政府・各政党・国民は、陛下の譲位の思し召しを真摯に受け止め、皇位継承の在り方を真剣に考えてゆかねばならない、と思います。

 ありがとうございます

 天皇陛下が、天皇の位を生前に皇太子殿下に譲位するお考えであることが、明らかにされました。

 天皇陛下は昭63年1月、御年56歳という高齢で即位されて、天皇の御位に就かれました。陛下はこれまでに、前立腺がんと心臓バイパスの2回に及ぶ手術をされました。ご即位以来28年の長きにわたり、宮中行事はもちろん、憲法に定められた国事行為を、一心に果たしてこられました。

 それだけではありません。先の大戦における戦没者への「慰霊の旅」で、硫黄島、サイパンなどをお訪ねになり、戦後70年にあたる昨年は、ご高齢をおして、激戦地ペリリュー島やフィリピンを訪問し、慰霊鎮魂をなさいました。また東日本大震災などの被災地に何度も足をお運びになり、避難所では膝をついて、被災者をお励ましになられるなど、こうした天皇皇后両陛下のお姿に国民は斉しく励まされ、勇気づけられたのです。

 天皇陛下は「国民のために尽す」という姿勢を明らかにされ、以前から「務めを果たせるうちはベストを尽くす」と述べられている通り、公務の負担軽減には消極的でした。

 こうして常に国家国民に思いを寄せられてこられた天皇陛下に心からの感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 こうして一心にお務を果たしてこられた天皇陛下が、生前の譲位のご意向を示されたことは、私たち国民一人ひとりに、皇室の在り方をしっかりと考えて欲しいとの、天皇陛下からの問題提起、メッセージと受け止めるべきだと、私は考えます。

 天皇陛下は数年前から、皇位を生前に譲位するお考えをお持ちであったと伝えられています。一部報道によれば、5年ほど前から、大正天皇の病状の深刻化にともない、皇太子だった昭和天皇が摂政をお務めになった詳しい経緯や制度的背景を周囲に検討させておられたとのことです。
 
 生前譲位だけでなく、摂政についても十分に考慮したうえで、今回、生前譲位の意向を明らかにされたのだと拝察します。つまり、天皇陛下は皇室の将来に、極めて強い危機感をお持ちになっておられるのではないか。だとすれば、事態は極めて深刻だと言わざるを得ません。

 今の皇室典範は、第4条で「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」と規定しており、皇位継承は天皇が崩御された時しか想定されていません。明治時代に定められた旧皇室典範の方針を踏襲したものです。

 昭和59年4月、昭和天皇が80歳を超えられた時、国会で譲位について質問がありました。当時の宮内庁次長は皇室典範に譲位の規定がない理由について、
① 譲位を認めると上皇や法皇などの存在が弊害を生じる恐れがある
② 天皇の自由意思に基づかない譲位の強制があり得る
③ 天皇が恣意的に譲位できるようになる
 などと答弁しています。
 
 つまり、皇位の生前譲位のもたらす危険性が指摘されているのです。

 11年前の小泉政権時代、首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は、「女性天皇」や母方に天皇の血筋を引く「女系天皇」を認める報告書をまとめ、皇室典範改正法案を準備したことがありました。しかし、翌年2月、秋篠宮紀子さまのご懐妊が明らかになり、法案提出が見送られた経緯があります。
 しかし、これまで、天皇の生前譲位はまったく想定されていませんでした。

 さて、天皇陛下のご意向の通りに、皇位を生前に皇太子殿下に譲位するためには、皇室典範に譲位の決まり事を設けるなど皇室典範の改正が必要となります。
 仮に皇室典範が改正され、皇位の生前譲位が認められると、天皇と皇太弟、そして太上天皇(上皇)の3人が同時に存在するという事態になります。これでは却って、皇位が不安定になる恐れがあるのではないかと、私は愚考します。

 しかし、天皇陛下は、神話の時代から2千年以上もの歴史と伝統のある皇室の在り方を熟慮に熟慮を重ねられた上で、皇位の生前譲位のご意向をお持ちになったに違いありません。実に恐れ多いことです。

 いま私には天皇陛下のご意向を受けて、何を為すべきなのか、何から手を付けるべきなのか、明確なことは残念ながら、申し上げる知恵も資格もありません。

 しかし、天皇陛下が生前譲位のご意向をお持ちであることが明確に示されるのであれば、安倍総理はじめ内閣、国会は真摯にこれを受け止め、皇室典範形成を俎上に載せて検討を始める他ないと思います。

 ただ、決して拙速であってはならない、慎重にも慎重に検討を進めるべきです。その際に、現行規定第16条の「摂政」が大いに参考になろうと考えます。

 天皇陛下が身を以て示された、皇室の将来へのご心配をしっかりと受け止め、まずは古代、推古天皇の御世に聖徳太子を摂政として冊立した智慧に学ぶことではないでしょうか。その上で、天皇陛下の問題提起を全国民がしっかりと受け止め、日本国の、そして天皇の在り方を真剣に考えるべきではないでしょうか。

 安倍総理は天皇陛下の重要、かつ困難な問題提起をしっかりと受け止め、いずれ何らかの機会を得て、天皇陛下から直接、その真意をお伺いすることも必要になってくるのではないか、とも思います。
 
 古代、中世、近世、そして明治維新後と政体は大きく変化しましたが、我が国の国民は古来「君民共治」を理想としており、暗黙裡に「承詔必謹」(詔を承けては必ず謹め)こそが、我が国の歴史と伝統を支えてきた精神的支柱だと考えております。安倍総理も一国民として、承詔必謹を旨とし、天皇陛下の問題提起に対応していただきたいと思います。

 私たち一人ひとりが、日本国を根底から支えてきた皇室の存在、国体をどう考えるかに懸っているのだと思います。

 人類の歴史を振り返ってみると、大航海時代以来、世界はキリスト教を思想的基盤とする西欧文明一色に塗り固められてきました。
 
 しかし、近年、イスラム教による西欧文明に対する反逆が始まり、世界各国でテロ事件が多発し、これまでの世界秩序が大きく揺らぎ始めました。また科学的合理主義の考えが究極にまで進捗した結果、人間の自然に対する畏敬の念がほぼ消え失せつつあります。
 
 経済合理性と便利さの追求は、気候の激変を伴う地球温暖化という不可逆の状況を生みつつあります。これは自然による私たち人類へのおおいなる反逆とも言えるのではないでしょうか。
 
 我が国は明治維新以来、西欧文明に追いつけ、追い越せをスローガンに、近代化へ突き進んできました。しかし、その我が国もいま大きな歴史的大転換期に直面しています。
 
 自然に生かされ、自然と共に生きてきた、私たち日本人の歴史を今こそ、見直すべき時期にきていると思います。私たちが誇るべき皇室は、実はこの自然に生かされ、自然と共に生きてきた我が国の歴史そのものだと私は考えるのです。

 天皇の在り方、皇室の在り方を、単に制度上のこととして考えるのではなく、世界文明という大きな視点からとらえていくことが大切ではないだろうか。
 
 天皇陛下が生前譲位とのご意向をお持ちであることを知り、私なりに考えてみました。皆さんのご意見を聞かせていただければ、ありがたいと思います。

 最後になりますが、一言申し上げておきたいことがあります。

 いま政治家や報道各社が「生前退位」と表現していますが、天皇陛下が皇位をお譲りになることには、「譲位」という立派な言葉が存在します。日常使う言葉ではないため、「生前退位」という言葉が使われているのでしょうが、できるだけ「譲位」という言葉を使うべきだと私は考えます。近年、皇室について、敬語が使われていない場合があります。
 
 言葉の乱れは、国の乱れに通じます。

 合掌

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